令和５年 １０月法話 凡夫裸そのままに
ある本にこういう話が出ていました。昔、徳川時代も半ば過ぎた頃、尾張(愛知県)の人で大徳というお坊さんがいました。
江戸に出て教学を修め、帰途につく途中、箱根の関所にかかる通行手形を忘れてきたことに気づいたので、どうしたら
いいかと考えていると、そこに裸一つの雲助(くもすけ＝荷物など運搬をする人)の一軍がかけ声と共に難なく関所を通過
したのです。これをみて【ハハー彼らは裸だから故に役人にとがめられず関所が通れるんだな】と思って自分も思いきって
裸になり雲助のあとからついて走って無事に関所を通過したということです。その後、忽然と悟りました。【そうだ、人生、
いらない物や行を身につけ過ぎるから過ごしにくいのだ。一切を捨てれば、どんな難関も通過できる】と。以来、この信念
のもとに名も「関通」と改めて生涯裸で全国を行脚して人々を導かれたと伝えられているという話でした。私たちの人生も
いろいろ関門があります。それを何とか通るためには、あらゆることをしたり抜け道を通ってごまかそうとします。お金、地位、
権力などを身につけたものを使い通行しようとしてもかえって障害物として引っかけて転んだりして通行できないのです。
宗教の道も同じではないでしょうか。それは、凡夫裸そのままに帰ることなのです。親鸞聖人も法然上人との出遇いに
よって罪悪深重の凡夫の裸の自分自身が阿弥陀さまの光に照らし出された時、そのままで救う阿弥陀さまのお心に気づか
され南無阿弥陀仏と感謝のお念仏を申されたのです。親鸞聖人の申された言葉を綴られた「歎異抄」の中に
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いづれの行もおよびがたき身なれば、とても地獄は一定すみかぞかし
(歎異抄第２条 浄土真宗聖典註釈版８３３ページ)
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とあります。どのような行も満足に修めることのできない私には、地獄以外に住み家はないという煩悩具足の裸のありのまま
の私を阿弥陀さまは、すでに見ぬいてだからこそ救わずにおれないとお慈悲のお心で今ここで働きづめに働いて下さって
いるご恩に朋に感謝のお念仏を申しながら日暮らし致しましょう。