昨年直木賞受賞された馳 星周さんの「少年と犬」という話の中で、東北の釜石で光
という少年が幼き頃に多聞という犬に出会い、その後まもなく地震によって飼い主が
亡くなり、その後、多聞という犬は、それぞれの地域でそれぞれの飼い主が変わりま
すが、その飼い主を支え寄り添いながら目線はひとつの方向を向いていたのです。
その目線の先は、最後に九州熊本で再開した少年でありました。その少年は、地震
の震災後、震災の恐怖で一言も口を聞かないし笑わなくなったのです。しかし犬と
再開して、言葉は出ないものの笑顔がでるようになりました。笑顔がでたのもつか
の間、今度は熊本の大地震が起き、はからずもその犬が少年のために身を挺して
倒れてきた壁の下敷きになり、いのちをかけて少年を守ったのです。ずっと絆で繋
がっていたのでありました。まもなくして犬の多聞は、亡くなりますが、お父さんが
「多聞はもういない」と言うと少年は「違うよ、お父さん、多聞は、いるんだ、ここに。
・・・多聞の声が聞こえたんだ。だいじょうぶだよ、光、ぼくはずっと光と一緒にいる
からね。だから、なんにも心配することないんだよって」という言葉を発したのです。
それを聞いていたお母さんの目からは、涙が溢れていましたという話であります。
それは、単なる悲しみの涙ではありません。いつでもどこでもこの私自身を見放さな
いことに、気づかされ、これからもどんな苦悩があろうとも乗り越えていける「ありが
とう」のよろこびの涙とともに我が子の口をして言葉が流れ出たのであります。
ご開山親鸞聖人の浄土和讃に
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南無阿弥陀仏をとなふれば 十方無量の諸仏は
百重千重囲繞して よろこびまもりたまふなり
(浄土和讃 現世利益和讃 浄土真宗聖典註釈版５７６ページ)
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「阿弥陀さまからご信心をいただいて南無阿弥陀仏を称える身になると、十方
世界におられる数え切れない諸仏が百重にも千重にもとりまいて、お念仏をす
る身になったことをよろこび、おまもりくださるのです」と親鸞聖人はおっしゃって
いるように阿弥陀さまは、煩悩具足で苦悩する私をすでに見ぬいて、だからこそ
見捨てずにおけない救わずにおれない、ここに私(阿弥陀さま)はいるからねと
大慈悲のお心で今ここで私にはたらきづめにはたらいてくださっているその
ご恩に両手を合わせ、ありがとうございますとご恩報謝のお念仏を朋に申しな
がら日暮らし致しましょう