令和元年 6月 

 私につける薬は、ただ念仏しかありません  

  先月(5月)に入るとこちらは、すっかり雪も解けてなくなり、車も走りやすくなりました。
するとスピードが上がります。それにあわせるかのように警察のスピード取り締まりが
多くなりました。私自身の心の中で〈せっかくスピード出して快適に運転しているのに
取り締まりだなんて。取り締まりの時だけなんとか減速して捕まらなければ。そうだ〉
と良からぬ考えが湧き上がり、ねずみ取り対応レーダーを購入し取り付けて運転して
いました。すると運転するたびにレーダーから「スピード取り締まりエリアです。スピード
注意!スピード注意!」と至るところで、何度も何度も私に知らせるのです。私は思わず
「うるさいなあ。そんなにいつも言わなくても」と怒って言いました。数日後、隣町の
檀家さんのお参りに車で行き帰る途中で、「ステルスです。スピード取り締まりエリア
です。スピード注意!」と大きなアラームまでなりました。しかし、帰る方向は、今まで
取り締まりしているのを見たこともないので「取り締まりはしていないだろう。スピードを
あげても大丈夫だろう。うるさいなあ」と腹を立て思い込んでいるうちに私の前にいた
車が警察のねずみ取りに捕まってしまったのです。私も危うく捕まるところでしたが、
間一髪セーフでした。私がもし先頭だったら、おそらく捕まっていたでしょう。
「○○につける薬はない」と言うようにレーダーまでつけて、しかも何度も何度もこの
私にスピード注意を呼びかけているのに素直に聞いて減速するどころか、逆に、うる
さいと腹を立てながらますますスピードを上げようとする愚かな私なのです。ご開山
親鸞聖人は、歎異抄で
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薬あればとて、毒をこのむべからず  
 (歎異抄 第13条 浄土真宗聖典註釈版843ページ)

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【いくら薬があるからといって、好きこのんで毒を飲むものではない】とおっしゃってい
ます。それほどに好き好んで毒を飲みつづけている私なのです。自分が正しいと思い
込み、煩悩の毒をますます盛んにしているどうしようもない愚かな私をすでに見抜いて
だからこそ救わずにおれないとお慈悲の心で今ここで私に働いてくださっているのです。
私につける薬は、ただ念仏しかありません。朋に阿弥陀さまのご本願を信じて、ご恩
報謝のお念仏申させて頂きながら、日暮らしいたしましょう。

   

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