古典落語に「お血脈」という話があります。信濃の善光寺にお血脈の御印があって額に
印を押してもらえればどんな罪を犯しても極楽にいけるというお宝がありました。ハンコ
一つで一人残らず極楽へ行ってしまい、しまいには地獄へ来るものが一人もいなくなり
ました。おかげで地獄では不景気そのものです。貴重品はおろか、鬼の金棒に至るま
ですべてを出し、シャバの骨董屋に売ってしまうありさまでした。赤鬼も青鬼も栄養失
調で血の池をふらふらさまよっていました。この姿を見て困り果てた閻魔(えんま)大王
も、「こうなれば地獄にいる泥棒を雇い、お血脈を盗み出すほかない」と石川五右衛門
を雇い、「もし盗んできたらおまえの地獄での苦しみを免除して重役にしてやるぞ」と
いって久しぶりにシャバに戻った五右衛門、さすがに手慣れたもので、善光寺へ参詣
するように見せかけて入り込み、お血脈の印を見事に盗み出しました。ところが宝物を
手に入れた五右衛門も自分の額に印を押し、地獄に帰らずにそのまま極楽へ行ったと
いう落語のお話です。さて、浄土真宗のお宝は何でしょうか。本願寺第八代蓮如上人が、
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
当流の真実の宝というは南無阿弥陀仏、これ一念の信心なり
（蓮如上人・御一代記聞書末 浄土真宗聖典註釈版1309ページ）
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
と言われました。浄土真宗の真実の宝は、南無阿弥陀仏の六字の名号なのです。この
六字には、阿弥陀さまが、煩悩具足の私をすでに見抜いて救わずにおれないと願いの
ありったけをこの六字の宝に凝縮して
今ここで私にいたり届けて下さっているのです。
そのご恩に朋に感謝のお念仏を申しながら日暮らし致しましょう。