俳優の加藤剛さんが６月１８日に亡くなられました。８０歳でした。加藤さん
といえば、映画、舞台、中でもテレビ時代劇｢大岡越前」で知られています。
暖かい名奉行ぶりで人気を博しました。その大岡越前の話の中で、こういう
話があります。１人の子どもをめぐって２人の女性が｢母親」ということで、
けんかになりました。そこで、大岡越前は、｢その子をまんなかにして子ども
の手を１本ずつ持ち、綱引きのように引っ張りなさい」といったので、２人
は子どもを引っ張りました。すると、子どもがたまらず｢いたい、いたい」と
言った瞬間、一人の女性が手を離したのです。もう一人の女性は、手を離さ
ず、引っ張り抜きました。その女性は、｢私が引っ張り抜きましたから私が
この子の親ですよね」と言って、その子を連れて行こうとすると大岡越前は、
｢待ちなさい。本当の親なら、子がいたいと叫んでいるのに どうして引っ
張り続けることができようか。子のいたみを哀れに思い、手を離したあなた
が、本当の親だ」と裁いたという話があります。子どものいたみは、その
まま親のいたみでもあったのです。同様に阿弥陀さまは、(衆生苦悩我苦悩)
まさにあなたの苦しみ悩みは、我が苦しみ悩みと背負っていらっしゃる真実
の親さまが阿弥陀さまなのです。親鸞聖人の ご和讃(正像末和讃）の中に
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如来の作願（さがん）をたづぬれば 苦悩の有情(うじょう）を捨てずして
回向(えこう）を首(しゅ＝第１）としたまひて 大悲心をば成就せり
(浄土真宗聖典註釈版 ６０６ページ)
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とありますように阿弥陀さまの願いは、 あさましい自己中心の煩悩をかかえ
て苦しみ悩むこの｢私」を真実の親なればこそ、見捨てておけない、放って
おけない、救わずにおれないと慈悲のお心で 阿弥陀さまの方から立ち上がっ
て下さって今ここで私に はたらいて下さっているのです。そのご恩に朋に
感謝の お念仏を申させていただきながら 日暮らしいたしましょう。