イソップ童話に｢ずるいキツネ｣という話があります。イヌとネコが落ちていた
肉を見つけて奪い合いのけんかをしていました。通りかかったキツネが｢けんか
をしないように、ぼくが半分に分けてあげるよ」と言って肉をふたつに分けま
した。でも、片方だけ少し大きかったので、キツネはちぎって食べました。
すると今度は、もうひとつのほうが大きくなってしまいました。キツネは、
大きくなったほうをちぎって食べます。こうしてキツネは、ふたつの肉をかわり
ばんこに食べて、最後にはぜんぶ食べてしまったという話です。相田みつをさん
の言葉に｢奪い合えば足りぬ。分け合えば余る｣とあります。イヌとネコは仲良く
分けていれば良かったのですが、欲のために争い、食べることが出来ないばかり
か、それにつけこんで、横取りされるまさに地獄の世界です。これは、童話に限
ったことではなくて、この私の姿そのものなのです。ご開山親鸞聖人は
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
凡夫というは無明煩悩我らが身にみちみちて欲も多くいかり
腹立ちそねみねたむ心多くひまなくして 臨終の一念にいたるまで
とどまらず きえずたえず・・」（一念多念文意、註釈版６９３ページ） ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
欲も多く貪りと怒り腹立ちと愚痴でこの身いっぱいに、臨終に至るまでとどまら
ない消えない絶えない煩悩でみちあふれている凡夫こそ、この私なのですと言わ
れました。この私を阿弥陀さまは、《仏かねてしろしめして》とすでに見抜かれ
て、だからこそ見捨てずにおけない救わずにおれないと大悲のお心でいつでも
どこでも今ここにでも呼びかけ、はたらきかけくださっているのです。その阿弥
陀さまのおはたらきにご恩報謝のお念仏を申させていただきながら朋に日暮らし
をさせていただきましょう。