平成２８年 ２月
今年（平成２８年）は、あえて申年（さるどし）ですね。年賀状の中に３匹のおサルさん
がいて、１匹目は両手で目を隠し、２匹目は耳を隠し、３匹目は、口を隠しているご存知
の「見ざる聞かざる言わざる」のイラストが描かれていました。目と耳は、２つあるので、
両手でおさえるのはわかります。でも口は１つなのに両手でおさえているのです。「言わ
ざる」は、両手でないと もはやおさえきれないのでしょうね。イソップ童話に「おおか
みがきた」というお話があります。「ある村にヒツジ飼いの少年がいました。毎日ヒツジ
の世話をしていた少年は、その仕事に飽きてしまい、ある日こう叫んでみたのです。
「オオカミだ！オオカミだ！」すると村の人が、あわてて集まってきました。それを見て
少年は大わらい。また数日たって叫んだのです。「オオカミだ！オオカミだ！」あわてて
集まってきた村人を見てまた少年は大わらい。数日すると、ほんとうにオオカミがやって
きました。少年は今度は、必至で叫びました。「大変だ！ オオカミがきたー」村人は
少年のことを誰も信用しなくなっていたので、誰一人として集まってきません。ヒツジは
オオカミに襲われ、大きな被害がでたというお話です。〈口は災いの元〉とよく言います。
仏教の言葉に※十悪(じゅうあく)とありまして、なんとそのうち４つが口の悪なのです。
その１つに妄語(もうご)と言って、うそをつくことなのです。わたしたちは、いつも本当
のことを言っているでしょうか。きっかけ縁によっては、この少年のように「ウソ」をつ
いているこの「私」ではないでしょうか。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
さるべき業縁のもよおさばいかなるふるまいもすべし
（歎異抄１３条 註釈版８４４ページ）
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うそをうそと思わず、迷いを迷いと思わず、闇を闇と思わず逆に明るいとさえ思いこんで
いる自己中心の「私」。ご開山親鸞聖人が申されたように 縁があれば何をしでかすかわ
からない煩悩をかかえた煩悩だらけの私が阿弥陀さまのお慈悲の光に照らされて何とあさ
ましいお恥ずかしいことだったと気づかされるのです。阿弥陀さまは、「仏かねてしろし
めして」とこの私を最初からお見抜きになって、だからこそ慈悲のお心で救わずにおれな
いと今、ここで私に働きづめに働いて下さっているのです。そのことに気づかされたとき、
ウソつきの「私」の口から「ナモアミダブツ」と御恩報謝のお念仏を朋に申させていただ
きながら日暮らしいたしましょう。
※ 十悪・・・仏教における身口意（しんくい）の１０のとくに悪い行為。
身の三悪（身に関わる三つの悪）１殺生（せっしょう）・・命を奪う
２偸盗（ちゅうとう）・・盗み
３邪淫（じゃいん）・・・不淫らな異性交遊のこと
口の四悪 ４妄語（もうご）・・・うそをつくこと ５綺語（きご）・・・・まことのないかざった言葉
６両舌（りょうぜつ）・・二枚舌を使う
７悪口（あっく）・・・・他人の悪口
意の三悪 ８貪欲（とんよく）・・・むさぼり
９瞋恚（しんに）・・・・いかり
１０愚痴（ぐち）・・・・・おろかさ