平成２７年２月

　　　　阿弥陀さまの慈悲にくるまる私

　　　　　　中村久子さんは、ご存知の方も多いと思いますが、明治３０年に岐阜県高山市に生まれ、３才　　　　　　　の時ダッソ病という病気で両手両足を切断しました。２０才の時に芸人として見せ物小屋で働　　　　　　　くことになりました。心の中は、苦しくて悲しくて生きる喜びがない日々でした。その後、あ　　　　　　　る婦人会の会合の時、隣にいた方の口から「ナンマンダブ、ナンマンダブ、お念仏なさいませ　　　　　　　。一切は阿弥陀さまにお任せすることです。どんな時も、阿弥陀さまは、私たち衆生を抱きか　　　　　　　かえて下さるのです。お念仏させて頂きましよう」と、にこやかにお念仏を勧めて下さったの　　　　　　　です。その時のことを久子さんは「そのお言葉はまさに干天（かんてん）に慈雨でした。長い
　　　　　　　間土の中にうずめられていた一粒の小さい種子がようやく地上にそっと出始めた思いがしまし
　　　　　　　た。そうだ、お念仏をさせて頂きましょう。そして、阿弥陀さまにすべてお任せ申し上げよう」　　　　　　　とこのことをきっかけに彼女は、お念仏の道を深め、今までいやというほど苦しみ悩み続けて
　　　　　　　きた久子さんが、初めて、手足のないこの過酷な人生こそが、お念仏の　み教えに出会うため
　　　　　　　の尊いご縁であったのだと、心の底からうなずくことができたのです。歌の中の１つに
　　　　　　　「手はなくも足はなくとも　み仏の慈悲にくるまる身は安きかな」
　　　　　　　手足のない人生。人が見ればこれほど過酷な人生はないと思うかもしれません。しかし今の私
　　　　　　　は、阿弥陀さまの温かい懐に抱かれて、この上もない安らかな人生が恵まれているのですとい
　　　　　　　う歌です。ご開山親鸞聖人が和讃の中で

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　　　　　　　如来の作願（さがん）をたづぬれば　苦悩の有情を捨てずして
　　　　　　　回向を首（しゅ＝第１）としたまひて　　大悲心をば成就せり　（正像末和讃）
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　　　　　　　とありますように阿弥陀さまの願いは、 どうしようもない煩悩をかかえて苦しみ悩むこの
　　　　　　「私」を捨てておけない、放っておけない、救わずにおれないと 阿弥陀さまの方から立ち上が
　　　　　　　って 慈悲のお心で今ここで私にはたらいて下さっているのです。阿弥陀さまの慈悲にくるま
　　　　　　　る私。そのご恩に感謝の　お念仏を申させていただきながら朋にこの人生を強く明るく生き
　　　　　　　抜かせていただきましょう。合掌

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