平成２３年 ３月
舎利弗の友だちの疑問
お釈迦様のお弟子の中でも智慧第一と言う舎利弗（しゃりほつ）のところにある日、お釈迦さまの お話をまだ聞いたことのない友だちがやってきて「仏教の言葉で、涅槃（ねはん）という言葉を 聞いたことがあるけど、どういうことだろうか？」と聞きました。
舎利弗は、「涅槃というのはね、貪欲（とんよく＝むさぼり）・瞋恚（しんに＝いかり）・愚痴 （ぐち＝おろかさ）の煩悩がさっぱりなくなる消える〈さとり〉のことだよ。ただね、例えば兄弟 でおやつの取り合いをしているとき、《ぼくのほうが少ない》《いやぼくのほうが少ない》って すぐにけんかをする。この私は、おやつひとつにしても貪欲、瞋恚、愚痴という煩悩の心が涅槃 どころではなくて、すぐに盛んにおきてしまうんだよ」という話です。ご開山親鸞聖人は、
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
凡夫というは、無明煩悩欲も多く怒り腹立ちそねみねたむ心多く
ひまなくして臨終の一念に至るまでとどまらずきえずたえず
（一念他念文意）
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
能発一念喜愛心 不断煩悩得涅槃 〈正信念仏偈〉
〈よく一念喜愛の心を発すれば、煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり〉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
もえさかる火のように、臨終の一念までとどまらない消えないたえない煩悩をこの身いっぱいに かかえたこの私を阿弥陀さまは、見抜いてだからこそ大悲のお心で救わずにおれないと働いてく ださり、阿弥陀さまのひとりばたらきで、信をおこして、救いを喜ぶ人は、煩悩を断ち切ること のできないままで、浄土でさとり（涅槃）を得ることができるのですとおっしゃっています。そ の御恩にお陰様です有り難うございますと御恩報謝のお念仏を申させていただきながら朋に日暮 らしをさせていただきましょう。