平成２０年７月
善譲お坊さんの話
こういうお話があります。昔、大分県に善譲（ぜんじょう）という心のやさしいりっぱなお坊
さんがいました。しかし、こどもの頃は、悪いことばかりしていました。ある日のこと、近所の
おばさんが、頭から血をながしている子どもをつれて、善譲の家にきて「あんたの子が、うちの
子に けがをさせたんですよ。どうしてくれるですか」善譲のお父さんお母さんは「すみません」
とあやまるだけでした。しばらくして家に帰ってきた善譲に「おまえのような人に迷惑をかける
悪い子は、この家の子どもじゃない。帰ってくるな」と言いました。すると善譲は、反省するど
ころか本当に家を出てしまいました。夕方になりお母さんは、夕ごはんのしたくをだまってしな
がら外ばかり気にかかりました。お父さんも うでぐみをしてだまったまますわったきりです。
その時、善譲は、家の窓の下まで帰ってきて、中の様子をうかがっていました。そのうちにお父
さんが、「善譲が帰ってきたらみんなで食事にしよう。このままだと、ごはんが冷えるから い
つでも食べれるようにあたためておいてくれ」と言いました。それを窓の下で聞いていた善譲は、
思わず窓をたたいて「お父さん」と叫びました。お父さんは、びっくりして善譲のところに行き、
「おなかすいただろう。心配したぞ。さ、早く家の中に入ってごはんにしよう。もうどこへも行
くなよ」と涙を流しながら言いました。夕食を３人で食べ始めました。善譲は、これほどおいし
い夕食を今まで食べたことはありませんでした。悪いことばかりして、しかられていた善譲が、
お父さん、お母さんの善譲をおもう心がわかったとき、すみませんとすなおに あやまることが
できました。このことがあってから、善譲は、すっかりかわって心のやさしい子になり、やがて
りっぱなお坊さんになりました。同様に阿弥陀さまは、
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇悪性さらに やめがたし こころは蛇蝎〔じゃかつ〕のごとくなり・・◇
◇ （正像末和讃）
◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
蛇蝎のように煩悩の毒をつくりだし何をするかもしれないおそろしい本性をもったこの私を見抜
いて、だからこそ見捨てずにおれない救わずにおれないと今ここで働き詰めに働いてくださって
いるそのご恩に感謝のお念仏を申しながら朋に日暮をさせていただきましょう。