平成１６年５月
阿弥陀さまは、「自己責任」できない「私」を引き受けます
先月、日本民間人がイラクの人質となり、解放されたニュースがでました。喜んだのも束の間、それからは周囲の
「自己責任」という言葉に重くのしかかられて、身柄が解放されても 逆に計り知れないほど心が拘束される、囚わ
れてしまっているのです。ある新聞に「自己責任」とは、「自分でしたことの結果に『自分だけで』責めを負う」
と書かれていました。解放された人質の「自己責任」の論議はともかくとして、「私」の人生において、様々な
ことに拘束され、がんじがらめのしがらみの中にあって、悲しんだり苦しんだり悩んだり憂えたりして倒れている
「私」を「自己責任」だからといって 「七転び八起き」のように 自ら転んだら、すぐに立ち上がって私一人で責
めを負うには限界があります。むしろ「七転八倒」のように転んで倒れて沈みっぱなしの「自己責任」できない
「私」なのです。
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◇ 生死の苦海ほとりなし ひさしくしづめる われらをば ◇
◇ 弥陀弘誓のふねのみぞ のせてかならずわたしける
（高僧和讃） ◇
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どんなに小さい石でも 水の中に入れたら沈んでしまいますが、どんなに大きい石であっても船に乗せたら沈まず
に楽々と生死の海を渡ることができるのです。石が軽くなって浮くのではなくて、重い石は重いままで浮かばせよ
うとする船に力があるのです。生死の迷いの世界に沈みっぱなしの凡夫の「私」、「自己責任」できない程に重い
罪業をかかえた「私」を阿弥陀さまの方から、「そのまんまで引き受けたぞ、だからこそ救わずにおれない」と
いつでもどこでも今ここにでも限りない願いをかけて「ナモアミダブツ ナモアミダブツ」と至り届けて下さって
いるのです。
その阿弥陀さまの お慈悲のお心に気づかされた時、「そうでした。決して「自己」独りぼっちで責任を負ってい
る私では、ありませんでした。おかげさまでした、ありがとうございます」と ご恩報謝の お念仏を申しながら、
朋に この人生を強く明るく生き抜きましょう。