平成14年8月

  「ジコチュウ」は、夏だけの虫ではありません

    夏になると急に蚊等の虫が多く出てきますね。刺されて 痛がゆくなりつらい思いをします。この私自身にも
    いろんな虫を抱えています。すぐ泣いてしまう「泣き虫」。ゲームばっかりする「ゲームの虫」。そして何で
    もうまくできないとか人に何か言われたりされると「腹の虫」がおさまらないで、何をするかわからない「私」
    なのです。「腹の虫がおさまらない」とは、腹が立ってがまんできないことなのです。「腹の虫がおさまらな
    い」自己中心の人のことを以前から
「ジコチュウ(自己虫)」と言われていました。これは、もはや夏だけの
    虫ではありません。この世に生まれてから死ぬまで「この私」に住みつく虫なのです。自分だけが見えて他人
    が見えない虫。自分の欲望・感情のままに忠実で他人の気持ちを思いやったりはしない虫なのです。
   「人間のいのちの重さは、 地球より重い」と言いますが、でも、ある方が、「ほんとうは、そのように思って
    いる人は、いないと思います。もしそう思っているのなら、連日、ニュースで人の命を奪うような残虐な事件
    など起こるわけがないのです。だから「人間のいのちの重さは、 地球より重い」ではなくて
   「《私》のいのち は、地球より重い」というのが正解じゃないでしょうか。人は誰しも「この私が一番可愛い
    のです。」いざとなったら、自分の為なら何をするかわかりません。自分の欲望を満たす為なら、人を蹴飛ば
    してでも、場合によってはいのちを奪うような何でもする「ジコチュウ」なのです。しかしながら親鸞様は、
  ※「仏かねてしろしめして」と申されましたようにそういうどうしようもない「ジコチュウ」の「私」をアミダ様
    は、ちゃんとお見抜きになって 救わずにおれないとやるせない思いで、今ここで私に慈悲の お心で働きく
    ださっているのです。虫と言えば、最近では見かけなくなりましたが昔、虫が入らないようにする「蚊帳(か
    や)」がありました。
「大名も頭を下げる蚊帳の中」
    蚊帳の中に入るためには、頭を下げたことのない大名も頭を下げるのですね。同様にアミダ様の慈悲のお心に
    気づかされて今まで頭を下げることのしなかった「ジコチュウ」の「私」が、その御恩に自然と頭が下がって
    いき、感謝の「ナモアミダブツ」とお念仏を申させて頂く中にこの人生を精一杯強く明るく生き抜くことがで
    きるのです。ともにお念仏を申しましょう。

  ※「仏かねてしろしめして、煩悩具足の凡夫と仰せられたる・・」・・・歎異抄「第9章」の中のご文です。
   「阿弥陀仏は、はじめから知っておられて、あらゆる煩悩を身にそなえた凡夫であると仰せになっている」
    という意味です。     

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