平成１４年１１月

　　　帰るべき故郷帰るべき浄土

　　　　北朝鮮に突然拉致された被害者の方が、２０数年ぶりに１０月１５日、日本の故郷にいる親、
　　　　家族と劇的な感動、涙の対面をしました。拉致されてからは、たとえ結婚をし子どもが授か
　　　　り不自由はなかったとしても　もしかしたらこれから先、ただ生きる為に　がんじがらめの
　　　　しがらみ、不安と迷い、絶望の中で虚しく過ごしていたかもしれません。「わたしは、もはや
　　　　北朝鮮人なのか・・それとも日本人なのか、いったい何者なのか？私の人生、これからどこへ
　　　　向かって行くんだろうか？私の故郷は、どこなんだろうか？」としかしその間も、「我が子」
　　　　のことをひたすら思い、このまま放っておけず、捨てておけず、じっとしておれず、ただ元気
　　　　で帰ってくることを願い、ひたすら呼んで呼んで呼び続けていた親が故郷にいたのです。山、
　　　　川、谷すべてのものが輝いて見える故郷は、「私」の親のいる場所であり、帰る場所なのです。
　　　　同様に私たちの人生の帰るべきところ、それが親様・阿弥陀如来の在す（まします）　彼岸浄
　　　　土なのです。親のいるところが、子どもの帰るべき故郷なのです。しかしながら「私」のほう
　　　　からは、この道も　あの道も全部閉ざされて通れる道はありません。
　　※「煩悩具足のわれらは　いずれの行にても生死をはなるることあるべからずを、あわれたまいて
　　願をおこしたもう本意、悪人成仏のためなれば、他力をたのみたてまつる悪人もっとも往生の正因なり」
　　（あらゆる煩悩を身にそなえている私は、どのような修行によっても迷いの世界をのがれることは
　　　できません。阿弥陀さまは、それをあわれに思って本願をおこされたのであり、そのおこころは、
　　　私のような悪人を救いとって仏にするためなのです。ですから、この本願のはたらきにおまかせ
　　　する悪人こそ浄土に往生させていただく因を持つものなのです。）とご開山親鸞聖人が、おっし
　　　ゃっているように阿弥陀さまのほうから　煩悩をかかえて　どの道も進めない凡夫の「私」を放
　　　っておけず、捨てておけず、お目当てとして、救わずにおれないとのご本願をどうか信じてお念
　　　仏申しておくれよといつでもどこでも呼び続け、働きづめにはたらいて、そのおはからいによって
　　　必ず浄土に生まれさせていただける身にしていただくのです。その阿弥陀さまの御恩に　ただただ
　　　おかげさまでしたと感謝感謝のお念仏を申させていただきましょう。

　　　※歎異抄（たんにしょう）第３章の御文

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